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Art as Technology: Accelerating the East #2

テクノロジーとしてのアート:加速する東洋 #2

マッケンジー・ウオーク
セバスチャン・ブロイ / 河南瑠莉
ニコライ・スミノフ / ロイス・アン


どのように複雑なアイデアもその実践は現実にあり、生活空間と不可分に結びついています。 「テクノロジーとしてのアート」と題した本プログラムは、「テクノロジー(知の実装化)」の語源に立ち返り、公共に語りかける有識者=パブリックインテレクチュアルの姿を通じて、日々の生活と思考の変化を促すオンラインコロキアムです。

未来を予測する情報データによって、私たちの時間概念はどのように変化するのでしょうか?イデオロギー対立を超えて、どのような代替の地政学的未来を想像できるでしょうか?商品化と消費のプロセスに終わりはあるのでしょうか?—— 仮想空間の論壇に招かれた論者が、独自の研究分野から変化するいまを究明していきます。

1.
マッケンジー・ウオーク
(ニュースクール大学メディア&カルチュラルスタディーズ教授)
「資本は死んだ:もっと悪い何か?」2021年
英語 日本語字幕付 15’39”

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資本主義ではなく、新自由主義でもない——もっと悪い何かだとしたら?

メディア理論家として知られるマッケンジー・ウォークは、情報の価値が新しい支配階級に力を与えたと考えます。情報の所有と管理を通じて、この新しい階級は、これまでのように労働だけでなく資本を支配します。それはアマゾンやグーグルのようなハイテク企業だけではありません。ウォルマートやナイキでさえ、ブランド、特許、著作権、そしてロジスティックシステムを所有するだけで、生産チェーン全体を支配できるようになったのです。

テクノユートピアの信望者は、依然としてこうした革新を資本主義の「改善」であるように謳っていますが、労働者にとって、そして地球にとっては、それはいままでよりもより悪い何かなのです。新しい支配階級は、情報の力を利用して、立ちはだかる労働や社会運動の障害を回避するでしょう。そこからどのような抜け道を見つけられるでしょうか? この新しい世界を分析するだけではなく、それを変える方法は本当に考えられないのでしょうか?ウォークは、現代をコントロールし新たな階級の力に明るい筋道を照らそうと試みています。

2.
セバスチャン・ブロイ / 河南瑠莉
「ポスト資本主義は想像可能か?」2021年
日本語 26’16”

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*HD配信ですので、安定した視聴環境でご覧ください。

資本主義社会における利便性の高い生活に依存しながら「脱」資本主義を掲げることは、本当に矛盾にみちたことなのでしょうか。『資本主義リアリズム』の著者マーク・フィッシャーは、2017年の講義『ポスト資本主義の欲望』で、そのような問いを残してこの世を去りました。『資本主義リアリズム』の日本語訳を担当したセバスチャン・ブロイと河南瑠莉の二人は、フィッシャーの批評眼を通じて、このポスト資本主義への問いに内包されている政治的意識と立場の問題について考察します。

ポスト資本主義社会をめぐる解釈は多様な形をとることができますが、それは資本主義の道徳的批判や絶対的な「外部」の探求ではなく、日常レベルで表現されている不満や欲望を政治的な次元で捉え直すことから始まるのだと彼らは論じます。例えば心身の解放を求めて、労働外の時間をヨガやマインドフルネスに充てることは、裏を返せば、時間の貧困を必然として引き受けていることと同義だと言えるでしょう。ブロイと河南は「個人的な範囲で『脱資本主義のオアシス』をポツポツとつくっていく減速主義」にとどまるだけでは、本質的かつ政治的な資本からの解放にはならないと分析します。

では私たちが「左派」のステレオタイプにとらわれず、個人主義的な範囲を飛び出していくにはどうすればよいでしょうか?マルクス主義フェミニズムの文脈で知られる「立場理論」を援用する二人によって、階級や権力構造への問題意識を共有できるような政治的な行為者性を獲得するための手がかりが示されます。

論考(PDF)はこちら

3.
ニコライ・スミノフ / ロイス・アン
(アーティスト)
「国家の錬金術師」2021年
英語 日本語字幕付 23’14”

✴︎本レクチャーは、映像作品《錬金術国家Ⅰ:器官なき身体》(2021)を理論的に補完する論考『国家の錬金術師:世界と神の自己否定を加速させること』からの抜粋です。

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錬金術とは、卑金属を金に変えようとする科学技術のことであり、二千年以上前から世界各地で科学者、芸術家、哲学者により秘密裏に実験が繰り返されてきました。無価値から価値を生み出す過程で、不老不死思想が生まれ、錬金術師は神や創造主の存在に重ねられました。錬金術を宗教や政治の場で活用し、国家建設に応用しようとする思想の誕生です。ニコライ・スミノフとロイス・アンは、人間や国を素材に壮大なる国家的実験として錬金術を実践し、思想的に支えた近現代の「国家の錬金術師」として、731部隊の石井四郎、京都学派の西谷啓治、ロシアの哲学者アレクサンドル・ドゥーギン、そして英国の哲学者ニック・ランドの名を挙げます。

レクチャー前半で、スミノフは、こうした近現代の国家の錬金術師たちと、ピタゴラス教団、道教思想、タントラ思想、新プラトン主義等の古代の神秘的・秘教的な哲学的伝統との繋がりを示唆します。アンは、映像作品《錬金術国家Ⅰ:器官なき身体》(2021)で創り上げた石井四郎と西谷啓治のハイブリッドなキャラクターに焦点を当て、なぜ高尚な科学者であった石井が、アジア全域で残忍非道極まりない生物兵器実験を行う首謀者になったのか、その思想的・哲学的背景を問います。鍵となるのは、ハイデガーに師事し、日本の帝国主義に共鳴し、哲学の社会・政治的利用を支持した西谷の、仏教の禅的な「無」で、西洋のニヒリズムを加速させ、西洋を超越するという思想です。

西洋近代の科学技術と思想を自己にインストールしつつも、東洋を生きる科学者、哲学者として、崇高なる使命感に情熱を傾け、時代に翻弄された石井と西谷。国家の錬金術師としての彼らの側面が、サイバー廃墟内を彷徨う兵士のアバターに扮した2人の論者を通して、不気味に浮かび上がり、今日的な意味を問いかけています。

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テクノロジーとしてのアート:加速する東洋 #1

フランコ・ビフォ・ベラルディ、ヘレン・へスター、ボグナ・コニオル

[開催中]

Third Research Lab

*オンラインイベントは期間限定となります。日本国内でのみご覧いただけます。


本イベントは、サードリサーチラボの企画により、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京の支援のもと開催されました。

「テクノロジーとしてのアート」
プロジェクトメンバー:
大坂紘一郎
三上真理子
飯島周多郎
日比野紗希
山形一生
Matthew Garret
肥髙茉実
小倉亜美
中西園子
Metahaven

Special Thanks:
入亮介
田中義久
Daryl Jamieson

主催:サードリサーチラボ

協賛:0-eA

助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京


テクノロジーとしてのアート:加速する東洋 #1

どのように複雑なアイデアもその実践は現実にあり、生活空間と不可分に結びついています。「テクノロジー(知の実装化)」の語源に立ち返り、仮想空間に招かれた論者が生活の変化を促して語りかけるオンラインコロキアムです。

満州の死... それは戦後アジア誕生の基盤である | ロイス・アン

「死の工場」として語り継がれてきた731部隊。日本軍の人体実験でしられる細菌兵器の開発が、東洋哲学と結びつき、新冷戦とパンデミックの世相に溶け合う。内臓を抉るサウンドと目に焼きつく閃光の中、技術、国家、身体をめぐりるフィクション理論のアートフィルム。

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