3.
ニコライ・スミノフ / ロイス・アン
(アーティスト)
「国家の錬金術師」2021年
英語 日本語字幕付 23’14”
✴︎本レクチャーは、映像作品《錬金術国家Ⅰ:器官なき身体》(2021)を理論的に補完する論考『国家の錬金術師:世界と神の自己否定を加速させること』からの抜粋です。
View Now
*HD配信ですので、安定した視聴環境でご覧ください。
錬金術とは、卑金属を金に変えようとする科学技術のことであり、二千年以上前から世界各地で科学者、芸術家、哲学者により秘密裏に実験が繰り返されてきました。無価値から価値を生み出す過程で、不老不死思想が生まれ、錬金術師は神や創造主の存在に重ねられました。錬金術を宗教や政治の場で活用し、国家建設に応用しようとする思想の誕生です。ニコライ・スミノフとロイス・アンは、人間や国を素材に壮大なる国家的実験として錬金術を実践し、思想的に支えた近現代の「国家の錬金術師」として、731部隊の石井四郎、京都学派の西谷啓治、ロシアの哲学者アレクサンドル・ドゥーギン、そして英国の哲学者ニック・ランドの名を挙げます。
レクチャー前半で、スミノフは、こうした近現代の国家の錬金術師たちと、ピタゴラス教団、道教思想、タントラ思想、新プラトン主義等の古代の神秘的・秘教的な哲学的伝統との繋がりを示唆します。アンは、映像作品《錬金術国家Ⅰ:器官なき身体》(2021)で創り上げた石井四郎と西谷啓治のハイブリッドなキャラクターに焦点を当て、なぜ高尚な科学者であった石井が、アジア全域で残忍非道極まりない生物兵器実験を行う首謀者になったのか、その思想的・哲学的背景を問います。鍵となるのは、ハイデガーに師事し、日本の帝国主義に共鳴し、哲学の社会・政治的利用を支持した西谷の、仏教の禅的な「無」で、西洋のニヒリズムを加速させ、西洋を超越するという思想です。
西洋近代の科学技術と思想を自己にインストールしつつも、東洋を生きる科学者、哲学者として、崇高なる使命感に情熱を傾け、時代に翻弄された石井と西谷。国家の錬金術師としての彼らの側面が、サイバー廃墟内を彷徨う兵士のアバターに扮した2人の論者を通して、不気味に浮かび上がり、今日的な意味を問いかけています。
テクノロジーとしてのアート:加速する東洋 #1
どのように複雑なアイデアもその実践は現実にあり、生活空間と不可分に結びついています。「テクノロジー(知の実装化)」の語源に立ち返り、仮想空間に招かれた論者が生活の変化を促して語りかけるオンラインコロキアムです。
満州の死... それは戦後アジア誕生の基盤である | ロイス・アン
「死の工場」として語り継がれてきた731部隊。日本軍の人体実験でしられる細菌兵器の開発が、東洋哲学と結びつき、新冷戦とパンデミックの世相に溶け合う。内臓を抉るサウンドと目に焼きつく閃光の中、技術、国家、身体をめぐりるフィクション理論のアートフィルム。